〈解説〉調査・実験のシミュレーション:t検定
平均値の差を検討する
t検定は、2つの平均値に統計的な差があるかどうかを検討する方法です。たとえば、心理学研究に参加してくれた学生の英単語記憶テストの成績を、記憶方法Aを用いた学生と記憶方法Bを用いた学生とで比較したとします。このとき、成績の平均点に統計的な差があり、記憶方法Bのほうが平均点が高かったとすると、一般に記憶方法Bを用いるように指導することで学習成績が伸ばせる可能性があります。研究に参加してくれた少数の学生のデータをもとに、母集団でも同じ傾向があるだろうと予想しているわけです。この例の場合、母集団は記憶方法AまたはBを用いて学習している(あるいはこれから学習する)学生であると考えられます。(もちろんですが、学習成績に影響するのは記憶方法だけではありません。t検定の説明のための、きわめて単純化した例であることに注意してください。)
シミュレーションと実際の調査・実験の違い
実際の実験や調査では、データを取得する機会は一度だけです。しかし、取得されたデータは、あくまでも「確率的に変動する値」のうちの一つであり、絶対的なものではありません。もしも別のタイミングでデータを取得していたら、どのようなデータが得られる可能性があったのかを示してくれるのがシミュレーションです。なお、実際の実験や調査に近いデータにするため、乱数をすべて整数に丸めています。